テント写像(2) 不動点

前回のテント写像(1) カオス的振る舞い - ken2kent's diaryでは,テント写像の係数が2の場合,初期値のわずかな変動によって周期が大きく異なってしまうということを紹介した.

では,パラメタが他の値の場合も同様に初期値によって異なる周期を持つ解が得られるのだろうか?

 

[再掲] テント写像

 \[x_{n+1}=\begin{cases} ax_{n} & 0 \leq x_{n} < \frac {1}{2} \\a(1- x_n) & \frac {1}{2}\leq x_{n} \leq 1 \end{cases}\] 

 

今回は,テント写像の係数がa=0.75の場合を見てみよう.

初期値\(x_0 = 0.8\)とすると以下の様な軌道となる.

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上図よりだんだん0に近づいているのが分かる.また,下図は右上から左下に動いている.

実は初期値によらず0に収束してしまうのである.

このように収束して写像を繰り返しても変化がない点のことを不動点と呼ぶ.

 

参考文献:カオス入門 (カオス全書)

 

 

テント写像(1)  カオス的振る舞い

「カオス入門 」なる本を読み始めた.

今回は,第一章で紹介されたテント写像Matlabで計算してみた.

 

テント写像というのは,

 \[x_{n+1}=\begin{cases} ax_{n} & 0 \leq x_{n} < \frac {1}{2} \\a(1- x_n) & \frac {1}{2}\leq x_{n} \leq 1 \end{cases}\]

で表される.

今回はまず,a=2の場合を考えよう.実はこの場合,初期値のわずかな変化によって,\(x_n\)の軌道が大きく変化するのである.

 

初期値として\(x_0 = 0.1\)を与えると 

 

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 このように,0.4と0.8の値が交互に繰り返される周期的な軌道となる.

(因みにテント写像の名前は,下の図の様に\(x_n\)と\(x_{n+1}\)として点をプロットした形に由来.)

下の画像については,右半分は点(0.4, 0.8)と点(0.8, 0.4)を行ったり来たりしているということを表しており,左半分は初期値からの推移を表している.

 

次に初期値として\(x_0 = 0.09\)を与えると,以下の様な軌道となった.

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徐々に計算誤差が出てきてしまっているが,軌道は周期的になっており,

10周期となる.

0.01値が異なるだけで大きく軌道が異なっている.

更に,より0.1に近い初期値として\(x_0 = 0.099\)を与えると,

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上記の様な軌道となった.実はこの軌道は,周期50であることが示されている.今回は更新回数をこれ以上大きくすると計算誤差が大きくなってしまい周期性が分からなかったので53回の更新までしか載せていない.

 

たった,初期値が0.001違うだけで,その後の振る舞いが大きく変わってしまう.

この将来を予測しづらいという性質がカオスが持つ性質である.

 

カオス入門 (カオス全書)

カオス入門 (カオス全書)